Glenn Ligon  グレン・ライゴン
Glenn Ligon

29 March – 30 June 2013


ラットホールギャラリーでは2013年3月29日より6月30日まで、ニューヨークに拠点を置くアーティスト、グレン・ライゴンの個展を開催いたします。新作のペインティングやネオン作品、ドローイングで構成される本展は、日本ではじめてライゴンの作品を目にすることができる機会となります。


Glenn Ligon
Double America, 2012
neon and paint
91.4 x 304.8 cm (36 x 120 in.)
© Glenn Ligon Courtesy of the artist

1960年、ニューヨーク・ブロンクス生まれのグレン・ライゴンは、ペインティング、ネオン、シルクスクリーン、写真、インスタレーション、ビデオといった、多岐にわたるメディウムを用いて制作しています。なかでも、代表作として最も知られている作品は、1980年代後半から制作され始めた、テキストを用いた抽象画のシリーズです。ステンシルを用い、黒のオイルスティックで文字が繰り返し描かれたそれらの作品は、過剰なまでの厚塗りで画面が隆起し、何層ものレイヤーが重なることでカンヴァス上の文字はほぼ判読不能な状態となっています。
人種やセクシュアリティ、アイデンティティを問う面がしばしば強調されがちなライゴンの作品ですが、一方で、従来のモダニズム絵画やコンセプチュアル・アートの潮流に基礎をおきつつ、批評性をもって制作されています。また、アメリカ文学から絵本、そして奴隷体験記に至るまで、幅広いソースから引用されたテキストやイメージを用い、アメリカの歴史や文化に対する鋭い考察をもたらしてもいます。

本展では、Strangerシリーズのテキスト・ペインティングと、ガートルード・スタインの小説「3つの女Three Lives」(1909)から引用されたフレーズ「negro sunshine」を、オイルスティックと粉炭で繰り返し描いたドローイングを展示します。 Strangerシリーズは、一人のアフリカン・アメリカンとしてスイスの小村を訪れた時の経験を綴った、ジェームズ・ボールドウィンのエッセイStranger in the Village (1953)を引用した作品です。粉炭が塗り込められたその作品は、カンヴァスに独特のテクスチャーと照りをもたらすだけでなく、粉炭が石炭加工時に余剰として出る産業廃棄物でありながら、マテリアルとして黒光りする粉炭の美しさとのコントラストを浮き上がらせてもいます。
ライゴンのペインティングやドローイングでは、モノクローム、ステンシル、テキストの反復といった形式的な面と、テキストそれ自体が保有する感情的な面との間で対話が生み出され、引用されたテキストは抽象的なコンポジションへと変容させられています。また、言葉の影響力やひとつの言葉が世代間で異なる意味を持つことへの興味、そして文化・歴史と切り離せない自己やアイデンティティといった概念を変化させることに対する作家の関心が、それらの作品には如実に現れています。

本展ではまた、2つのネオン作品、Double America (2012)と、今回が初めての発表となるUntitled (Orpheus and Eurydice) (2013)を展示します。2005年からライゴンは、歴史的なテキストを引用したネオン作品を制作しています。文字の前面が黒く塗られているために、ネオンの光は鑑賞者側にではなく背面の壁へと柔らかく広がるように作られています。ネオンが作り出す黒と白の対比は、人種・社会・政治的問題の複雑さへの隠喩であるとともに、光と影、見えるものと見えないもの、生と死、といった相反する概念への思考をもたらすものでもあります。

ライゴンの作品はこれまで、ホイットニー・ビエンナーレ(1991、1993)、ヴェネチア・ビエンナーレ(1997)、ドクメンタ11(2002年)で展示され、2011年には回顧展「Glenn Ligon: America」がホイットニー美術館で開催され、その後、各地へ巡回するなど、個展も数多く開催されています。また近年では、オバマ大統領のセレクトにより、ホワイトハウスへの貸出が決まるなど、華々しく活躍している作家です。


Glenn Ligon
Study for Negro Sunshine #52 , 2010
oilstick, coal dust, and gesso on paper
30.5 x 22.9 cm (12 x 9 in.)
© Glenn Ligon Courtesy of the artist

 

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