スティーヴ・マックイーン

Cold Breath

Jul 1 – Sep 4, 2016


ラットホールギャラリーでは2016年7月1日から9月4日まで、スティーヴ・マックイーンの個展を開催いたします。本展では、マックイーンの初期16mmフィルム作品Cold Breath(1999)をプロジェクションいたします。本作Cold Breathは、2000年にロンドン、ニューヨーク、アヴィニョンの3カ所で発表されて以降、今日までプロジェクションされることがなかった作品のため、本展は大変貴重な機会となります。


Steve McQueen
Cold Breath 1999
film still
courtesy of the artist and Rat Hole Gallery

1969年ロンドン生まれのスティーヴ・マックイーンはこれまで、数々のフィルム作品やビデオ作品を発表し、1999年にターナー賞を受賞するなど、この四半世紀で最も国際的に注目を集め続けているアーティストのひとりです。これまでに3作の劇映画も制作し、近作『それでも夜は明ける 12 Years a Slave』は2014年のアカデミー賞で作品賞を受賞しています。映像作品のほかにも、写真作品や立体作品を制作するマックイーンは、自らの作品がもつ両義性に見る者を引き込み深く内省を促すような、そしてけっして饒舌に主張することなく、それでいて力強い方法で、政治意識を前景化させながら社会的・歴史的問題に取り組んでいます。

1990年代初頭の処女作以来、マックイーンは緻密で人目を引く印象的なイメージを複雑に操作し、編集やフレーミングの実験的手法を用いることで、思いもよらない映像作品を展開してきました。なかでもその特徴は、見る者の身体や心理に踏み込むような直接性にあります。実際、彼の映像作品では身体を巻き込むようなものが多く、女優シャーロット・ランプリングの目を突いたり、触れたりする様がクロースアップで映し出されるCharlotte (2004)はその顕著な例と言えます。

さらに、この「身体」は他者の身体のみならず、作家自身の身体が含まれることもしばしばです。本展のCold Breathでも、マックイーン自身の乳首が親指と人差し指でつねられ、つまびかれ、引っ張られる様子が10分間、音もなく映し出されています。彼の最初期のフィルム作品Bear (1993)が、彼を含む2人の裸の黒人によって繰り広げられる、儀式的にも見える取っ組み合いを映し出すのと同様、Cold Breathもまた、ジェンダーやセクシュアリティ、暴力や欲望といったテーマが絡み合うなか、抽象的かつ官能的なイメージが強烈な身体性を喚起させます。マックイーンは、乳首を弄ぶことで引き起こされる快楽と痛苦の狭間に位置する奇妙な領域の比喩として、「第三の目」に言及しています。「感情はここ[額の真ん中]に、強く、あります。そして、私が乳首の映像を作品に使いたかったひとつの理由は、それが目に似ているからなのです」。
また、Charlotteでも参照されているブニュエルとダリが共作したシュルレアリスム映画『アンダルシアの犬』(1929)冒頭の目を削ぐシーンを、本作Cold Breathと比較しながら述べています。「目は体のなかで唯一、その内部のすべてをあるがままに語る部位なのです。開いた傷口のように」。

彼の初期フィルム作品では、アンディ・ウォーホルやヌーヴェル・ヴァーグなどの映画の影響のもと、サイレントかつモノクロの映像が、壁面を床から天井の高さまで使ってプロジェクションされます。スクリーンや部屋のサイズ、鑑賞者とプロジェクションの関係といった視聴の条件もまた、空間の問題についてのアイデアを表明するという面において、そして鑑賞者自身の身体性をより強く意識させるという面において、彼の初期フィルム作品では欠かせない要素となっています。

【スティーヴ・マックイーン来日イベント】
展覧会「Cold Breath」にあわせて、スティーヴ・マックイーン氏をお招きし、アーティスト・トークを開催いたします。聞き手には林道郎氏(上智大学教授、美術史・美術批評家)、近藤学氏(翻訳家)をお迎えいたします。
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日時:2016 年7 月22 日(金)17:00-(開場16:30)
会場:国立新美術館 3F 講堂
言語:英語(日本語同時通訳)
参加無料、要予約
定員に達しましたので、受付は終了いたしました


Steve McQueen
Cold Breath 1999
film still
courtesy of the artist and Rat Hole Gallery

 

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