スコット・マイルズ

Heal Walls

Sep 15 – Oct 28, 2016


ラットホールギャラリーでは2016年9月15日から10月28日まで、スコット・マイルズの個展を開催いたします。シルクスクリーンを主体としたコラージュ作品や立体作品などの新作が発表される本展は、日本で初めてマイルズの作品を目にすることができる機会となります。


Scott Myles
HEAL WALLS, 2013- 2016
Unique screenprint on aluminum
100 x 141 x 4 cm
Courtesy of the artist and The Modern Institute/Toby Webster Ltd, Glasgow

1975年、スコットランド生まれのスコット・マイルズは、日常的な生活空間や都市の商業空間からファウンドオブジェを掬いあげ、抽象的な形態へと新たに作り変えた作品を制作しています。制作にあたっては、様々にリサーチを重ね、コンセプチュアルな視点から多様なマテリアルを用いた作品を生み出しています。ときには他のアーティストの作品を引用・剽窃(アプロプリエーション)し、自らの作品がもつ体系に組み入れることも行っています。多様なアプローチを試みるマイルズの関心は、美術と経済の関係や、相互義務・相互扶助の経済的現れとしての贈与交換、そして私たちの心理や主観といったものが物理的環境にどのように刻み込まれているのかといった問題へと向けられています。

マイルズの作品にはここ数年来、彼の関心事が凝縮されたモチーフとして、彼のスタジオの扉が象徴的に登場しています。本展で壁面に展示される作品はすべて、その扉のプロポーションにもとづき、扉の実寸内に収まるサイズで制作されています。また、その扉のイメージ自体も新作のなかに実際に姿を現しています。マイルズにとってその扉は、作品が生み出される彼の私的な空間と、外の公的な空間との狭間に閾として存在するものとして捉えられ、日常生活や日常空間に経済がどのように浸透しているかといったこと、そして外界と、より私的で匿名的な彼の芸術言語との間の折衝を象徴するものとしても考えられています。
フランスの作家ジョルジュ・ペレックはエッセイ集『さまざまな空間』のなかで、いかなる扉も「空間を二分し、分割し、浸透しないように阻害し、仕切りを設ける。一方の側には、私がいて私の場所があり、私生活、家庭が存在する。……もう一方の側には、他者がいて外界があり、公生活、政治が存在する」と書いています。しかし、公私の境界はいったいどこにあり、そして、美術作品とアーティストにとってスタジオの内と外との閾を行き来することはいったい何を意味するのか。マイルズの新作はそうした問いを見る者に思考するよう促しています。

またギャラリー中央に展示される立体作品は、昨年Amazonが発売した、所有者の声や習性に適応しスキルを身につけてゆく、人工知能音声アシスタント端末「Amazon Echo」にもとづいて制作されています。なかでもマイルズは、人間の代わりを務めるこの製品の名前が、古代ローマ詩人オウィディウスの『変身物語』に登場する妖精エコーに由来している点に注目します。エコーは、とある事情から自ら言葉を発せず、話し相手の言葉尻のみを反唱することしかできなかったがために、恋をした相手ナルキッソスに愛想を尽かされてしまいます。グローバル企業が私たちにもたらす技術は、私たちの言葉や欲望の断片をエコーのように反唱してゆく一方で、ナルキッソスの役割を私たちに演じさせているのかもしれません。


Scott Myles
Untitled (ELBA Black, Green), 2012
Unique Screenprint on paper
194 x 194 x 16 cm
Courtesy of the artist and The Modern Institute/Toby Webster Ltd, Glasgow


Scott Myles
Untitled, 2013
Perspex, mirrored paint, painted wood, snail shells
158 x 41 x 41 cm
Courtesy of the artist and The Modern Institute/Toby Webster Ltd, Glasgow

 

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